勉強法いろいろ

中国語の力をもっとつけたいと思うとき、学校に通っているなら、まず学校でやることを徹底するのが一番だと思います。普通なら語学クラスはそんなに大人数ではないので、先生は1人1人の問題点を見て指摘してくれるはずだからです。

でも、それでは足りないとき、学校に通っていないときには自分で勉強法を考えることもあります。私が学校でやってよかったと思う勉強法、通訳のために工夫してみた訓練法を紹介します。

中級で力のついた聴写

留学前に通っていた中国語教室では、メインの学習は聴写でした。例えばNHKラジオ第2放送で午後1時からやっている中国語ニュース。先生が教材として適当なニュースをピックアップし全員分テープにダビングしてくれるので、それをノートに書き取っていきます。

聞いたことがある人は知っていると思いますが、NHK中国語ニュースは1本1分くらい。やりはじめの頃は1本を書き取るのに1時間以上かかりました。日本のニュースだから何を言っているのかは想像がつくのに、結局はしょせん想像にすぎず、毎週語彙のなさを痛感しました。

もし中国人と互相学習をするなら、自分で中国語ニュースを録音して書き取り、学習相手の中国人にテープを聞かせてみてもらえばいいし、相手の人にも同じような方法で日本語のニュースを書き取らせてみてあげれば、こちらもきちんとした日本語の勉強になりそうですね。勉強法としては古典的で単純ですが、ニュースの題材をうまく選べば、それについてディスカッションをするなど、レベルの高い勉強に発展させることもできるのではないでしょうか。

私は聴写で漢字1つ1つに敏感になりました。まず、1文字の介詞や副詞を聞き落とさなくなりましたし、初めて聴く単語でも、1文字ずつの発音から頭の中で漢字を探り当て、そこから意味を取る、ということができるようになりました。

ただ聴写には問題もあって、漢字にしなければ気が済まない、音から直接意味を取ることが難しくなります。

私は、中級くらいでは聴写が効果的ですが、上級になったら(特に会話や通訳など、音で勝負するための中国語を必要としているなら)聴写はもうやらない方がよいのではないかと思います。

サイトラ

これは、ずっと以前の教室でやった練習方法。先生に次はこれをやるよ、と言われてやったので当時は知らなかったのですが、サイトトランスレーションでした。

私は、自分のレベルよりはちょっと易しい作文の問題集(『中国語中級作文』)を使いましたが、1回やったことのある問題集でもいいと思います。やり方は、予習はせず、授業で問題を見てその場で口頭で中国語に訳していきます。間違ったり、中国語の単語がわからなければ先生がその場で直してくれます。

程 美珍 (著), 高橋 海生 (著)

 
最初は直されたことをメモしていたのですが、そのうち書いている時間がもったいなくなって、授業の様子を録音しておいて、後で問題集をみながら自分はどう訳しているかを書き取り、先生に直されたところを赤で書き込んでいくやり方に変えました。

書き取る作業はちょっと面倒ではありましたが、予習はしなくていいわけだし、同じ問題を2回やることになるのでこのやり方は非常によかったと思います。次第に自分の訳し方のくせや、よくやる間違いなどがわかるようになってきますし、自分のしゃべっているのを聞くので、発音が自分が思っているよりヘタなことも思い知りました。

後に通訳訓練を受けたときに、自分のしゃべっているのを聴くのは非常に重要だと言われたので、偶然とはいえ、いい勉強法だったと思います。

もちろんこれは誰にでもできることではなくて、日本語も堪能な先生にマンツーマンで教えてもらっていてこそ、この練習ができたのでしょう。でも1人でやるのが苦にならなければ、自分で自分の訳をテープにとって聞くだけでも、訳せなかった単語のチェックとか、間違いやすい声調とか、勉強になることは多いと思います。

映画を聞き込む

授業で映画のリスニングをしたことがあります。教材は『芙蓉鎮』。結構長い映画ですが、何か月もかけて最初から最後まで聞きました。

先生が画面に紙を貼って字幕をかくします。場面場面で適当に切り、まずはどんな会話だったかわかる範囲で答えます。たいていは全くわからず、概要が言えればいいほうで、台詞をそのまま中国語で言えたりするともう大喜び。

その後、何回か同じ場面を見て、みんなでわかったところをつなぎ合わせながら先生に正解を教えてもらったり、時にはだいたい何と言っているか先に教えてもらってキーワードを聞き取る練習をしたり、いろいろなやり方で聞きます。
そしてその後、先生手作りのスクリプトのうち該当の部分をもらい、解説を聞いて、もう1回映画を見て、終わり。とにかく楽しい授業でした。

私はその教室を事情があってやめてしまったのですが、映画のリスニングはその後も続いたそうです。ある時先生からいただいた手紙に「もう4本目の映画に入りました。みんなすごく聞き取れるようになりました」と書いてあるのを見て、とても残念でした。

私はこの授業で語学は総合力だとつくづく思いました。映画は耳だけではなく、目からも情報を得ています。聞き取れないのに想像がつくこともあります。また映画の背景となった中国社会についての知識がなければ、逆に聞き取れているのに言っている内容が理解できないこともあります。言葉は言葉だけで成り立つものではないんですね。

最近は中国語字幕の入ったVCDが香港などで手に入るようです。こんなふうにして見た1本は、きっと忘れられない1本になると思います。

ネットの添削講座

私が大学生だった頃や中国語を勉強しはじめた頃と比べると、ネットの発達によって外国語の勉強はずいぶん様変わりしました。教材には事欠かないし、あの頃は考えられなかったネットラーニングもできるようになりました。

以前私がやっていたのは、とてもシンプルな、メールを使った通信講座。ピンインで書かれた課題を受け取り、漢字に直したうえで日本語に訳して送ります。正しく漢字に直せていなければ訳も違ってくるというわけ。

中国語の音と日本語を結びつける、通訳練習を文字でやるというものなのですが、最初はピンインを漢字に直すのに何回も辞書をひかなければならず、うんざりしてしまうレベルでした。もちろんこれだけやっていたわけではないのでこの講座だけの効果ではないとは思いますが、やっていくうちに辞書をひく回数が格段に減り、上達したことが実感できました。

そして実は、この講座の添削で中日翻訳についていろんなことを勉強したのです。ない情報を加えたりある情報を落としたりしないこと、流れのいい日本語にすること、気取った言葉を選ぼうとして意味をはずさないこと…などなど、短い添削のメールの中にはっと気づかされるコメントが多く、ほんとうに勉強になりました。

ネットの動画や音声、スマホのアプリなど、メディアを使った教材があふれている今からは考えられないやり方かもしれませんが、私はそれで力をつけることができました。アプリの使い方に慣れたり、バージョンアップに対応したり…という手間は意外とかかるので、こういうシンプルにすぐできる方法も悪くないと思います。

通訳補助訓練

通訳訓練の本をみると、いろいろな通訳訓練のやり方が出ています。ときにはすごくやる気になってやってみるんだけど、全然歯がたたない、うまくコツがつかめない、できているのかどうかわからない…といってあきらめてしまいがち。
でも中には、やってみてやりやすいと思う補助練習もありました。その中から、手持ちの教材だけでできるやり方をいくつかご紹介します。。

速音読

やり方:手元にある文章から適当なものを選び、声を出してやや速めに読みます。

効果:滑舌の訓練、中国語の読めない漢字・声調のあいまいな漢字の確認、背景知識の取得。

おすすめ教材:
日本語
1 新聞なら自分の好きな分野、よく読むページからやってみましょう。
2 慣れてきたり、やる気のある期間はふだん絶対見ないページに挑戦します。
中国語
1 すでにやったことのある中国語教科書。もうわかっているので精神的に楽。
2 会社や仕事の資料など、自分と関連の深い分野の文章。背景知識があるのでこれも比較的楽です。
3 新聞・雑誌、インターネットからとったもの。いくらでもみつけられるはず。

難点:声を出すのでやる場所が限定されます。家に1人でいるときは片づけとかもしたいし… などと言っていてはいつまでも練習できないんですよね。

シャドウイング

やり方:テープを聞きながら少し遅れて同じことを言っていきます。

効果:聴くときの集中力アップ。とくに中国語のききのがしやすい1文字の語、例えば「増加了三倍」と「増加到三倍」の違いなどに敏感になれる気がします。

おすすめ教材:
日本語 ニュース。日本語とあなどるなかれ、やってみると意外にできません。
中国語 すでにやったことのある教材のテープ。もちろん初めて聞くものでもOKです。

コツ:
1 自分の声とテープの音がかぶってしまうので必ずヘッドフォンを使います。
2 あまりにも難しかったり易しかったりするのはよくありません。
3 1つの教材をできるようになるまで何週間でも何ヶ月でもやります。それを超えないと決して次にすすめません。

難点:これも声を出すのでやる場所が限定されますが、音読と違ってテープを聞くだけなので工夫の余地があると思います。私はある夏、毎日近くの川でウォーキングしながらやりました。最初の3日は恥ずかしかったんですが、4、5日たつとすっかり慣れました。

構文をつかむ

やり方:日本語を聴いて文をSVOにまとめてしまいます。
1 「法務省は26日、新たな人権救済機関となる「人権委員会」の設置を盛り込んだ人権擁護法案を、秋の臨時国会に再提出する方針を固めた。」という日本語を聴きながら…
2 まずは「法務省+固めた+方針」をつかみましょう。
3 慣れてきたら「法務省+固めた+(再提出+人権擁護法案)的方針」をつかみます。
4 さらに「法務省+固めた+(向臨時国会+再提出+人権擁護法案)的方針」をつかみます。

効果:
日→中訳をするとき、構文があいまいでつまってしまう場合があると思いますが、SVOを頭の中でつかんでいるかいないかで全く違ってきます。つかんでいれば最低限の訳は出せます。
コツ:
テレビを見ながら気がむいたときにどんどんやってみます。長い修飾語は最初は無視していいと思います。慣れたら修飾語の中にあるSVOや介詞構造も一緒につかんでいきます。介詞を使う文はなかなかつかみにくいもの。これをパッとつかめるようにしましょう。

おすすめ教材:
1 ニュースは文章の構造がわかりやすく、ワンパターンなので割合つかみやすいです。
2 上級編としては、NHK教育の『視点・論点』がおすすめ。社説のTV版といった感じで毎日違う人が違う分野について話しているので、いろんな話し方や分野に触れることができます。

難点:気が向いたらすぐできる分、やめるのも簡単。ちゃんとやれているのかのチェック機能がないこと。

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