留学前
留学してぜひやってみたかったことの1つがHSK高等の受験です。日本でも受けられるとは聞いていましたが、わざわざ泊りがけで行くというのは経済的に大変なので、幸い留学先の西安外国語大学がHSKの会場になっているし、中国にいる間にぜひ受けてみたいと思っていました。
しかし、高等の試験は5月。3月からではさして勉強しないうちに試験になってしまう。しかも、4月5月はどうしても帰国しなければならない用事があって、落ち着いて力をつけてから受験するのはムリそう。でも、せっかくなのでやはり受験だけはすることにしました。
1回目
入学してしばらくするとHSKに関する情報が出始めました。試験日は5月14日、高等を受ける人は4月17日に模擬試験、受験予定者のための補講をするとのこと。さっそく事務所に行って補講と模擬試験の申し込みをしたのですが、「補講はまだ申し込む人がいない。もしかしたら開講されないかもしれない」。えー、あてにしているのに、それは困る! 開講日までときどき事務所に顔を出してみましたが、結局開講されませんでした。
しかたないので、対策は自分ですることにします。まず、高等は初めて受けるので、どんなものだか様子を知る必要があると思い、『HSK中国汉语水平考试应试指南(高等)』の模擬試験をやってみました。そこでわかったのは、時間が全然足りないということ。聴力がとくに弱いということ。作文と口試は具体的なことがまったくわからないということ。総合して言えば、級がとれるかどうかわからないレベルだということ。これは厳しい状況です。
そうこうしているうちに、模擬試験がありました。日記にも書きましたが、聴力は手も足も出ず、全体としてもやれたという感じがしませんでした。自分でやる模擬試験よりは実践的でしたが、それで劇的に実力が上がるわけでもなく、後日成績を聞きに行くと「う~ん、まあ9級かなあ」とのこと。9級にひっかかればいいですが、作文と口試をやっていないので、これもあてになりません。
結局、有効でまとまった対策は立てられずじまい。時間がないので圧倒的に弱い聴力をどうにかしようと、『HSK中国汉语水平考试应试指南(高等)』の聴力部分をやって、そのまま試験を迎えることになりました。
試験の様子は当時の日記に書きましたが、総合的な印象は「まだ力不足」につきます。西安に来て間がなく、留学の成果が現れていないとは言えますが、それは言い訳。でも実力を思い知るにはちょうどよかったかもしれません。
6月末になって、いよいよ結果が出たというので成績表をもらいに行きました。受験した人でごった返していて休み時間には受け取れず、授業が終わって駆けつけると担当の先生はもういない。午後になってしつこく行くと、やっと先生がつかまりました。成績表を受け取ると、9級! ひえ~よかった~、級があって。
しかし部屋に戻って改めて成績表を見てみると、9級とはいえ、なんと聴力は底線の最低点。つまり、あと1点で無級になるところだったのです。さっきは級があってよかったと安心したのですが、今度は一転、あまりの聴力のなさ、力のなさにがっくり。もう少しまともかと思っていたのに。逆に総合はAランク評価。しかも試験のときに少し時間が余ったくらいだったので、この部分はまあまあと考えてよさそうです。意外だったのは閲読で、Bランク。日本人なら閲読はできるというのもある程度のレベルまでであって、このくらいになると、速さと正確さの両立が求められているのだと思いました。作文はB。これは、30分も時間があるからとゆっくり構成を考えていて、規定の400字ギリギリだったのが影響しているのかもしれません。漢字を書くのは時間がかかります。30分のうち、20分は「字を書く時間」と考えておく必要がありそう。でも、事前になんの対策もせず、ぶっつけ本番でこれならよしとしましょう。口試はC。私の場合、美しい中国語、完成された構文でしゃべろうと思わず、とにかくどんどんしゃべった方がいいかもしれません。
もう1つ全体としてわかったのは、科目ごとにばらつきがあり、聞く・話すが圧倒的に弱いこと。それを克服するための留学でもあったので、今後の課題とし、9級がとれたことで満足することにしました。
2回目
ところが、夏になるとHSKに急展開がありました。高等試験が秋にもう1回行われることになったというのです。留学生の増加とレベルアップに鑑み、回数を増やすことにしたんだとか。これはありがたい。夏の一時帰国を終えて9月の新学期からさっそく対策を始めました。
総合と閲読は、余裕がないので試験の時間配分に留意するだけにして、事前対策はなし。作文は、授業で練習問題を山ほどやらしてくれることになったので、それでいいことにします。実際に国慶節の休みに5本、授業でも2本くらい書いて、試験までにかなり自信をつけることができました。
さて、口試。高等試験の対策本『HSK速成强化教程(高等)』を手に入れて読んでみると「受験生が中国語を話すスピードは1分間に約120~180字である。HSKの口試では3分間しゃべるよう求められているので、だいだい360~540字分しゃべることになる」と書いてあります。おお、これは新しい視点だ! 540字というと、作文で求められている字数とほぼ同じ。中につめる内容もほぼ同じくらいということです。ということは、作文の試験で、書く内容を5分くらいでざっと考え、20分で書いて、残り5分で文字の間違いを見直すという時間配分だとしたら、口試もテーマ1つにつき、5分かけてしゃべる内容を考えればいいということではないでしょうか(実際には、朗読の文章に目を通す必要があるので、4分くらいですが)。そこで、対策本に問題として挙げられているテーマをぱっと見て、5分以内にしゃべる内容を箇条書きにメモする練習をすることにしました。時間の余裕があるときには、それで実際に3分しゃべって録音し、あとでチェックするつもりだったのですが、実際には聴力対策に時間をかけたので、それは1回か2回しかやりませんでした。こういうのはいかにも中国語の実力と関係がない「試験対策」という感じがして、気が引ける部分がありましたが、とっさにスピーチをしなければいけないときの練習だと思ってやってみることにしました。
聴力対策ですが、どんな方法がいいだろうと考えていても時間がたつばかりなので、持っている聴力教材をとにかく片っ端からやることにしました。方法より量をとったわけです。やった教材は『HSK中国汉语水平考试(高等)听力理解技能训练』テープ8本『HSK中国汉语水平考试(高等)听力理解模拟试卷30套』テープ14本『汉语实况听力(初阶)(中阶)(高阶)』テープ12本『汉语水平考试模拟试题集(高等)』テープ3本。9月初めから試験日までにすべてを2巡しました。1巡めはテープを聞きながら問題をやり、答え合わせをしてから、間違えた問題があったらもう1回聞いて答えを確認するだけ。スクリプトは見ません。2巡めは同じようにテープを聞いて問題をやり、答え合わせをしてから、間違えた問題があった場合と聞き取りに不安がある場合にスクリプトを確認しました。時間があれば、聴写をしながら3巡めもやるといいかなと思ったんですが、今回はそこまでの時間はありませんでした。
それからもう1つやったのが、正解率の計算。毎日、その日やった問題の正解率を計算してメモしていたのですが、これは結構励みになりました。1巡めはだいたい65%前後の正解率でしたが、2巡めには70~75%にアップ。これは1回聞いたことのあるテープだったからなのか、耳が慣れてきたからなのか、その両方なのか、理由はわかりませんが、やっていて「力がついてきている」と思い込むにはよかったと思います。
そして試験。こちらも当日の様子を日記に詳しく書きましたが、とにかく「やりきった」という思いが強かったです。これで無級だろうと何だろうと、自分なりに納得できると思いました。
結果
結果は11月22日に知らされました。10級でした。しかも、1科目もCランクはなく、すべてBとAだけ。本当にうれしかったです。
中国語は試験のためにやっているわけではない、HSKだけが留学の目的ではないとは思っていたのですが、HSKがなかったら、1日1本ずつ600字の作文を書くとか、毎日4時間もテープを聞くとか、そんなことは決してしなかったと思います。それに、こうした勉強のやり方は日本で働きながらでは絶対にできません。そういう意味では、留学のメリットを生かせたと言えるかもしれません。
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