続・通訳学校

「通訳学校があったらいいのに」と言うと、「学校に行けばいいというもんじゃない、自分で努力すればいいだけ」と言われることがあります。もちろんそれは当然のことで、たとえ学校に通っていても、自分で勉強を続けることは絶対必要です。

でも自分で努力していれば、いつか通訳という仕事に就けるのかというと、これもまた疑問です。外国語学習者から通訳へ向かうレベルの人はそこそこ外国語ができます。そのうえで何をどのくらい勉強すればいいのかは、なかなか自分ではわかりにくい。聞く・話す・読む・書く、どれもそこそこできるからわかりにくいのです。最終的に身にならない勉強はない、なんでも勉強すべきだと思いますが、今自分に欠けている部分を真っ先に強化することも必要で、それを的確に指摘してくれる人がいるといないとでは違います。

それに、一人で勉強を続けるのは精神的になかなかきつい。悪いところを指摘されて落ち込んだり、ほめられて喜んだり、勉強仲間に刺激を受けたりすることが勉強のモチベーションの維持につながります。

もう一つ通訳学校の役割として、通訳業界の新しい人材発掘のルートになっているということがあります。通訳業界では、経験者(通訳とか、エージェントのベテラン社員とか)が「こいつならそろそろ簡単なアテンドくらいできそう」などと判断して通訳者としての第一歩を踏み出させることがあります。エージェントから見て通訳学校の学生はその候補者ですし、通訳のタマゴから学校を見ればチャンスのころがっている場所なわけです。

結局、当時の私や同学たちの不安は、自分たちの努力が間違っていないのかという不安、自分たちのレベルが判定できない不安、どこへ誰を訪ねていけば通訳の世界へつながっているのかわからない不安でした。逆に言えば、通訳業界から見てもどこにタマゴがいるのか、何をどれくらい勉強させれば通訳として使えるようになるのか、見えないとも言えます。

広く公募して統一的な試験をして通訳を採用する会社や機関ももちろんあります。直接の採用ではありませんが、通訳としてある一定の力があることを証明するために通訳案内士という試験もあります。学校に行かなくても、自分で力をつけてこういう試験を通って業界に入っていくこともできる。

でも依然として、通訳学校のもつ、通訳のタマゴと業界とをつなぐ「連絡通路」の役割はとても大きいと思います。今の北海道のように、圧倒的に中国語通訳(ガイド)が足りないと言われている状況ならばなおさらです。

そうは言っても、採算もとれなければならないし、きちんと育成できる指導者がいなければならない、学校を開くというのは簡単なことではありません。……堂々巡りになってしまうんです。

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