通訳学校

ある人に「通訳学校を開いてくださいよ!」と言われてしまいました。

そんな力は私にはないですし、今の仕事のパターンを考えても無理なのですが、札幌に中国語の通訳学校(クラス)がないことについては、考えてしまうことがあります。

私が札幌に来て中国語を再開したころ、同じクラスに通訳者のタマゴくらいのレベルの人がごろごろいました。大学の第2外国語で中国語をやり、中国に1年か2年留学し、HSK(旧)高級の9級か10級をとり、帰ってきて勉強を続けて、通訳案内士に合格したり挑戦中だったり……というレベルの人です。今、その同学のほぼ全員が企業で働いていて、通訳者になった人はいません。

今、北海道では中国語の通訳者(通訳案内士)が足りない足りない足りないと言っていますが、あの頃あんなにタマゴがいたのにと思います。

それにはいろんな要素があります。不安定なフリー通訳より安定した企業への就職をみんなが選んだということが大きいでしょうし、通訳業界よりも企業のほうがうまく人材を吸収したということも言えると思います。でも、タマゴから通訳へと育てる通訳学校がなかったことも1つの要因ではないかと思うのです。

日本で外国語を身につけるのは簡単ではありません。あの頃の同学たちは多かれ少なかれ、自分の努力の延長として「通訳」という職業を意識していたと思うのですが、その気持ちをどうやって実際の仕事に結実させていくかがまったく見えませんでした。

私は今さら採ってくれる企業もなく、声をかけられて引き受けてるうちに通訳を仕事にするようになりました。同学たちと時々会うと、みんな生き生きと仕事をしていて、どっちがよかったのかはわかりません。こんな感傷めいたことを言うのも、ぽつんと通訳をやってるのがさびしいだけなのかもしれません。

それがすべての理由ではないのはわかっていますが、通訳学校があったら違った展開になった人がいたかもしれません。孵化しなかったタマゴに金のタマゴがあったかもしれないのです。そうだとしたら、10年後に同じことを言わないために、そして、今「通訳」という職業を意識している人のために、通訳学校があったらと思うのです。

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