弁護士会通訳研修

弁護士会通訳協力者の研修に参加しました。これまでは模擬接見通訳をやったりという内容でしたが、今回は司法通訳研究の第一人者の方のお話を聞きました。さすがに最先端で研究されている方のお話は説得力があり、引き込まれて聞きました。

質疑応答の時、ある弁護士さんから「法曹界の通訳に対する認識について」質問があり、それに対して「単に2ヵ国語ができるのと通訳は違うということ、きちんとした訓練を受けて独自のスキルが必要だということを理解してくださっているのは、判事・検事・弁護士すべての中でもごく少数だといわざるをえない」との答えがありました。正直、これには少々ショックでした。

一般人の通訳に対する認識がそういうものだというのはよく経験します。海外バイヤー向け商談会の主催者が、打ち合わせ中に私のいる前で「通訳なんて留学生でいいでしょ。安いんだし」と言ったことがありますが、通訳者だったらみんな似たようなことを経験していると思います。

でも法曹界の人は、細かいことばの言い回しやニュアンスで量刑が変わることを身を以て感じているだろうし、それを争っているんだと思うんですが、こと外国語となるとそんな状態なんですね…。

通訳側にも問題はあります。法廷通訳登録をして「試験もないし、登録して来ちゃった。決まったパターンをしゃべるだけだから、丸暗記すればなんとかなるでしょ」と言った人に出会ったことがあります(1度も依頼されていないようですが)。語学力には自信がある人でしたが、根本的に問題がありますよね。いや、語学力に自信があるからこそ、こういうふうに思ってしまうのかもしれません。

もう1つ印象に残ったのは「難度が高くてできない通訳を『できない』と言える人が本当のプロ。母語じゃないんだから、できないことは恥ずかしいことではない。できないのにできるとウソをつくことの方が恥ずかしい」というお話です。語学力に自信がない人ほど見栄を張って、あるいは依頼者にダメ出しされるのを恐れて「できない」と言えない。

通訳はどこまでいっても「語学力」と戦う運命かもしれませんが、少なくとも仕事に向かう時はそれをえいやっと越えなければいけない、そんなふうに思いました。

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