中国と台湾のカッコの違い

中国の知人に頼まれて中日訳をときどきするのですが、その知人がものすごく約物にうるさい。カッコなら、日本語の「」と『』はどう使い分けるのか、中国語の《》とはどう対応するのかなどをいちいち聞いてきます。

おかげで私もその都度、共同通信の『記者ハンドブック』や『日本語表記ルールブック』を確認し、最近はつられてかなり敏感になってきました。

ところで、私は日中訳のチェックの仕事も承けていて、簡体字(中国大陸)、繁体字(台湾)の両方やっているんですが、訳文の中に「」が使われていることがたまにあるのです。

私は大陸中国語を勉強したので、「」を使ってはいけないとたたきこまれています。「」があると、これは翻訳者が日本語原稿に上書きして、そのまま残しているのだろうと思いながら修正を入れています。

でも、台湾はどうなんだろう。台湾のサイトでは「」を使っているのをよく見るので、台湾は使うのかな~などと漠然と思っていたのですが、なんだか気になって調べたら、こんなサイトがありました!

これによると、「」は引號として使うことができます。なんとなく感覚で使えるのかと思ってたけど、ちゃんと根拠があったんですね。うわ~なんでもっと早く調べなかったんだろう。自分をひっぱたきたいくらいです。

中国のものは表記の手引書を買って持っていますが、サイトでも見ることができます。こっちの方が本をいちいち出すより便利かな。

 

繁体字

10月までのバタバタはどこへやら、11月は少し仕事が減りました。とはいえ、ちょこちょこと小さい翻訳は入ってきていたので、仕事のスピードが緩んだだけで、作業時間はあまり変わっていません。だらだらやっていたというとよくないので、ていねいにやってたと言いましょう。

12月も出だしはそんな感じでしたが、すぐにバタバタしてきました。ちょっとストーリー性のある大きめの案件を2つ、同時進行ぎみにやっていて、しかも『64(ロクヨン)』横山秀夫を読んでいたので、電車に乗ってぼーっとしてると、頭の中でストーリーが混ざったりしてました。

そんなこんなしてたら、今日もまた繁体字のちょっとボリュームのある案件の依頼。繁体字はいつまでも苦手意識があります。昔々は簡体字に変換して翻訳したりしてましたが、さすがに今はそんなことはありません!

繁体字は中日辞典がないのが不便。ちょっとした単語も大陸と台湾では違っていて、簡体字の辞書に載ってなくて、意味は推測できるけど、やっぱり裏取りしたいというときは、時間を食ってしまいます。台湾中国語育ちの翻訳者仲間に聞くと、あっさり答えてくれて「中国は違う単語なの~?」なんてこともしばしば。

ああ、台湾繁体字中国語と日本語の中日辞典がほしい。できれば電子辞書か、PC辞書で。ちなみに、日本語を勉強する人が多いので、日中辞典はけっこうあります。

文言文

以前、台湾の文章を翻訳したことがあるのですが、文言文で書かれていてものすごく苦労しました。大きな案件だったので友人とチームで訳したのですが、あまりに苦労したので、集まって勉強会を開いたほどです。

その時、文言文の文法書があればいいのに…と思ったのですが、中国の教科書にしろ日本の漢文の教科書にしろ、実際の古典を解説し、たくさん読んで慣れろという形式のものばかりです。それが王道なのかもしれませんが、私は古典を鑑賞したいわけじゃなく、読めるようになるツールとして文法知識を手に入れたいだけなので、そこまで時間をかけたくなくて(ごめんなさい)、結局やらずじまい。

そうしたら最近になって、仕事ではないのですが少し古い中国語を読まなければならなくなりました。あの時の苦労を思い出しつつ、現代中国語の知識と漢字の意味と(辞書をひきまくっている)漢文の知識を総動員してなんとか読んでいます。ああ、文言文の文法書があればいいのに…。

以前もなかったのでダメだろうと思いつつ、淡い期待をいだいて調べてみると、なんと、ありました!!

白文攻略 漢文法ひとり学び


前半は白文(つまりは文言文ですね)を読むための基本的な文法。

たとえば「之」について、文言文では目的語+動詞+之という形が出てくるのですが、なんとなくカンで「動詞はこれだから先に書いてあるヤツはたぶん目的語だな、『○○ハ 之(これ)ヲ △△ス』っていう形だろうな」なんて感じで読んでいたんですが、この本にはずばり「之が動詞に着くと、その動詞を他動詞にする」と書いてあって、ああああ~すっきり~!

ほかにも「若は意味がたくさんある要注意の文字」だとか、「最初に書いてある単語が主語とは限らない、最初の単語が何かきちんと見極めるのが重要」とか、そうなの、それを教えてほしかったのということがいっぱい。

後半は常用漢字の解説(辞書として使える)があり、ここにある字に気をつけるだけでもラクに読めます。

白文を読むには漢字の知識がかなり必要なので、まったく知識ゼロの人がこの本1冊ですらすら読めるようになるのは難しいかもしれませんが、現代中国語を知っていたり高校で漢文をやった人なら、文言文を読むための知識がうまく整理できると思います。

もっと早くこの本を知りたかったと思いましたが、出版は2013年で、台湾の翻訳で苦労したのより後のことでした。

ミリメートル

映画関連の仕事をしました。台湾の方の通訳を担当する予定だったので、台湾のサイトで下調べをしていたら、こんなフレーズを発見。

以16、35釐米底片或電影規格數位攝影機拍攝

ん? 映画なんだから「16ミリ、35ミリフィルムもしくは…」だよね? なぜ釐米…?

確認のため、教育部重編國語辭典を見てみると、こう書いてあります。

釐米:量詞。計算長度的單位。公制一釐米等於一米的百分之一。亦稱為「公分」。

やっぱり釐米は1/100メートルだとはっきり書いてあります。映画のサイトが間違っているのか? 気になるので引き続き調べてみると、奇摩でこんな質問をしている人がいました。

釐是1/1000, 照說1釐米應是 千分之一米 即 1 公釐 ( 1mm ) ,
但很多人認為 釐米 是 公分 ( cm , 百分之一 米) , 不知何故?

どうも台湾では釐米をミリだと認識している人がいるようです。というか、「なんで釐米をセンチだと思ってる人がいるのか?」と、こっちを責める口調。なんでこうなったんでしょう。質問に対する答えの中に、納得できる理由がありました。

1釐米 = 1公分 = 1cm = 1/100 m
1毫米 = 1公厘 = 1mm = 1/1000 m
1mm 一般人讀做 1米釐(讀音) , 不是1釐米, 千萬不要弄錯了。

むむう。limiとmiliの発音上の混乱…ありうる。

ちなみに、台湾暮らしの長い友人に聞いてみたところ、やっぱり釐米はミリだと思っていたそうです。

今後、台湾の仕事をするときには要注意ですね。

中国慣れ

あるスポーツ大会の通訳をした。中国もチャイニーズタイペイも参加するというので、下調べのとき両方の用語を調べたら、けっこう違っている。そもそも超頻出単語「監督」が違う。うーん、こりゃやりにくい。

とはいえさすが中国人、というよりはさすが専門家、最初は両方の単語を言うようにしていたが、チームの人もそれに合わせていくつかの単語を使ってくれて、最終的には私との間でどちらでもないような、どちらにも通じるような適当な単語におさまっていった。まあこれはタイペイ側が、私の中国語が大陸中国語だとわかって合わせてくれたということがあるかもしれない。

このスポーツでは中国は発展途上国で、今大会での位置づけも「おみそ」っぽい感じなのだが、中国チームはそのへんがよくわかっているらしい。こんなに謙虚で自己を主張しない中国なんて初めてみたぞ。

とはいえ、今後中国が力をつけていって、日本あたりぐぅの音も出ないくらいになっちゃったら、この大会の雰囲気もものすごく変わるんだろうなあ。…ってこんなことを考える私は、中国慣れしすぎですか。