通訳の地位

通訳に関する記事を続けて読みました。

この記事、手話通訳は民間の通訳者を採用しているとのことですが、事前に情報を与えないのは民間という「よそ者」だからという理屈なんだろうと想像します。仮にあの場に英語通訳者を同席させて新元号を世界に同時発信しようと考え、外務省職員を通訳として使ったとしたら、事前に情報を伝えておかないということは考えられません。

通訳者が守秘義務を遵守していることを信頼していないし、記事にある通り、手話を必要としている人や、そのアクセス権を保障する手話通訳者を軽視しています。

間違えた通訳者には気の毒ですが、これが問題になったことはよかったことだと思いたいです。

www.msn.com
 
外国人増加の時代に法廷通訳の登録者が減る理由とは
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%A2%97%E5%8A%A0%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AB%E6%B3%95%E5%BB%B7%E9%80%9A%E8%A8%B3%E3%81%AE%E7%99%BB%E9%8C%B2%E8%80%85%E3%81%8C%E6%B8%9B%E3%82%8B%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%A8%E3%81%AF/ar-BBVFibQ
外国人労働者受け入れ拡大の新制度導入などが進む中、あまり知られていないことがある。日本語が通じない外国人が被告となる裁判で欠かせない法廷通訳の問題だ。最高裁の集計によると、通訳が必要になる公判が増える一方、法廷通訳の候補者名簿に登録された人数は減...

こちらに関しては、法廷通訳をしている友人から聞いていました。

その場での発言を訳すのではなくて、判決言い渡しや、事前に関係者にわたっている資料の読み上げなどはその資料が渡され、日本側が読み上げるのと同時にそれを「通訳」する方式に変わったのだそうです。要するに、渡された資料を訳しておいて、それを日本側の声にかぶせて読み上げるのです。

法廷通訳は勤務した時間で報酬が払われるので、こうすれば「読み上げを聞く+訳す」の勤務時間を半分に減らすことができます。

事前に渡される資料の翻訳に対する報酬はありません。それはあくまで通訳に便利なように資料を提供するだけであって、それを訳して読み上げろとは言われていないからです。事前に翻訳しておかず、その場でサイトラしたっていいわけです。

だけど、通訳者で事前に渡された資料を訳しておかない人なんていません。まして法廷通訳という重要な仕事なんです。

札幌にいた頃、弁護士会に登録して接見通訳をやっていましたが、年に1度、登録通訳者の勉強会が開催されていました。弁護士の中に外国人の犯罪や裁判の改善に熱心に取り組んでいるグループがあったのです。

そこでコミュニティ通訳の研究者や弁護士の先生から話を聞く機会がありましたが、一般的な法曹関係者の通訳に対する認識の低さにほんとうに驚いた記憶があります。

そもそも法廷通訳者に採用試験が課されないというのが不思議です。「お金は払うから、誰かやってよ」という態度にしか思えません。

さらに言えば、法曹関係はお金が出るからまだまし。医療関係は「治療を受けたいなら自分で通訳連れてきて、こっちは通訳にお金なんて出せない」です。私も医療通訳グループに少し縁がありますが、ほんとうにみんな身銭を切って通訳をやっているのです。

外国人労働者の受け入れに関して「どれくらい日本語が話せればいいか」ばかりが問題になっていますが、日本側の態勢はどうなのでしょうか。

同時通訳者のここだけの話

同時通訳者のここだけの話


私のようなはしくれの通訳でも「あるある」と思う箇所がけっこうあって、おもしろかった。
とはいえ、通訳をやっていない人、通訳に興味がない人にとっておもしろい本なのかな。たいへんだなとは思っても、共感することはできないように思う。かなり読者を選ぶ本。

沖縄でキャリアをスタートした後、東京に拠点を移した著者は、東京で改めて1からキャリアを積む必要があったと書いてあるが、やっぱりそうなんだね。私も東京に戻ってから、幸いまったく1からではなかったけど、やはり改めてキャリアを積まなきゃならないのかと感じることがある。

正直、それがしんどい。通訳という仕事は好きだけど、私には縁のない仕事だったのかなあと思うようになった。依頼をくれるエージェントが東京にもあるので、今ここできっぱりやめるというわけではないけど。

こういう本を読んで「あるある」と思えるくらいのキャリアは積めて、よかった。

中国語新刊

ときどき仕事の合間にネットで中国語の新刊を探します。Amazonならカテゴリを「本」にして「中国語」を検索ワードにし、出てきたところで「出版年月が新しい順番」に並び替えれば、新刊がトップに並びます。でもAmazonは韓国語やベトナム語などのアジア言語がなぜか必ず一緒に表示されるんですよね。検索は便利なんだけど、これは何とかしてほしい。

昨日、久しぶりに見てみたら、気になる本が何冊か出ていました。

中国語発音マスター CD付き

 

発音を教えるのはほんとに頭が痛いので、心強い教材が出たと思いました。

とはいえ、授業で教科書と合わせて使う余裕はないかもしれない。何らかの形で活用してみたいですね。

NHKワールド・ラジオ日本 中国語リスニング

 

出版社のサイトで見たら、題材はニュースではなく番組の方でした。確かにニュースとはどこにも書いてなかった…。

NHKワールドのストリーミングで以前はよく聴いてましたが、最近は中国の動画を見ることが多くなったので、あまり聴かなくなりました。

中上級のリスニング教材としていいかもしれません。

聴いて鍛える中国語通訳実践講座

 

本格的な通訳のテキストとしては『新版 中国語通訳への道』や『通訳メソッドを応用したシャドウイングと速読で学ぶ中国語通訳会話 (マルチリンガルライブラリー)』がありますが、どちらもビジネスの現場における中国訪日団の来日から離日までを想定した内容でした。

通訳練習入門としては『日中・中日通訳トレーニングブック CD付』があって、こちらはさまざまな題材を扱っています。

このテキストの題材はスピーチとニュースで、ずいぶん前に出た『中国語通訳トレーニング講座 [CDブック]』の新版という感じでしょうか。

 

『NHKワールド』と『通訳実践』は出版されたばかりだというのにAmazonでは品切れです。このレベルの教材を求めている人って結構いるんでしょうね。

急いで紀伊國屋書店で『通訳実践』を取り置きしてもらいました。買うだけでなく、やらねば。

通訳者のしごと

通訳者のしごと (岩波ジュニア新書)


toranekoさんのサイトで紹介されているのを見てさっそく買って読みました。岩波ジュニア新書はジュニア向けといってもレベルが高いものが多いのですが、この本も読み応えがあっておもしろかったです。

通訳をやらせてもらうようになってだんだん思うようになったのは、この仕事は単純な語学力の延長だけではないということ。

じゃあお前はどうなんだと言われると「ゴメンナサイ、がんばります」としか言えないレベルですが、「何かが違う」ことをばくぜんと感じ始めています。

だからよけいなのかもしれませんが、読んでいて思い当たることがたくさんありました。同時に耳が痛いことも、自分はこれから通訳としてやっていけるのかと怖くなることもたくさん…。

結論。中国語の勉強、しようっと。