ストラディヴァリウスを上手に盗む方法

相当なクラシックおたくでないとわからない情報が満載。私は少しはクラシックを聴くけど、ほとんどちんぷんかんぷんだった。
小説自体は可もなく不可もなし。最初の「ストラディヴァリウス」が一番おもしろかった。「ワグネリアン」は2本目の落ちが見え見え。「レゾナンス」は学生時代の処女作だそうだが、これはいただけなかった。ミステリーに進んだのは正解だと思う。
内容とは別だけど、本の装丁がいい。カバーを取ると、表紙が作中に出てくるある作品の楽譜になっている。この装丁に惹かれて読む気になった。これは、電子書籍では味わえない楽しみだ。

希望荘

小学館
発売日 : 2016-06-20
杉村三郎の中編4本。「ペテロ」なんかに比べると、ちょっと物足りなかった。
たとえば、井上喬美。あんなことをしたいきさつはわかったけど、そうせざるを得なかった理由、何がそうさせてしまったのかの闇みたいなものがあまり見えてこない。彼女はある意味でこの話の主人公なので、長編だったら通奏低音のように彼女の闇が描かれたんじゃないかなあと勝手に空想する。宮部みゆきは長編のほうがいい。
いずれにしても、杉村三郎は好きなキャラクターだ。事件に対する感情が一切なく、すがすがしいほどそれが徹底している。そういう意味では蛎殻の坊ちゃんもそうだ。2人でコンビを組んでくれないかなあ。

最相葉月 仕事の手帳

著者 : 最相葉月
日本経済新聞出版
発売日 : 2014-04-02
4つの部分に分かれている。「仕事の心得」はノウハウ的な内容で、短いこともあって突っ込みが不足しているように思う。もうちょっと読みたいところで終わってしまう。「聞くこと」、ラジオインタビューの手法についての自己評価の部分はさほどおもしろくないが、インタビュー自体はすごくおもしろい。野町和嘉の写真をぜひ見てみたくなった。「書くこと」がやはり真骨頂だ。最相葉月の著書は何冊か読んでいて、好きなライターなのだが、これほどのめりこんでいかなければ書けないものなのか。「読むこと」、何冊かは読んでみたいと思った。自分の好きなジャンルがあって、興味を引かれたものとそうでないものがある。
いろいろなところに書いた短文を集めた本はときどきあるが、おもしろいものとそうでないものが混在していることが多い。これもそういう印象。

愛しの昭和の計算道具

やけにハイテンションな語り口調はご愛敬として。
こんなにもたくさんの「計算道具」が日本に存在していたとは思わなかった。私はもう計算尺を使わなかった世代。この本を読んで使ってみたくなったが、もう製造されていないようだ。
やはり計算道具の王者は算盤だと思う。この道具は手先の器用な日本人に合っていたんだろう。OL時代、経理の女性社員が算盤の段持ちで、たいていの計算は暗算でやり、確認のために算盤で計算していた。
カシオミニはそんな達人(たち)をぶっ飛ばしたわけだ。これも、すごい。

午夜北平

1937年に北平(北京)で起きた殺人事件。20歳になる元英国領事の娘が惨殺体で発見され、前半は中国とイギリスの警察が、後半は被害者の父親が犯人を追う。しかし、事件の起こった「悪土」という場所、中・英当局、そしてやがて起きる日中戦争がその行く手をはばむ。

ほとんど埋もれていた実際に起こった殺人事件を、膨大な調査をして小説の形にした作品である。

北京空港の搭乗口前の書店で、何気なく買った本。ものすごく面白かった。事件の怪奇さ、登場人物、国際情勢、時代、場所。何もかもがからまりあっている。

事件の起こった場所は今の崇文門近く。知っている場所なので、あのあたりかな…などと思い浮かべながら読んで、それも楽しかった。

あと、翻訳がいい。日本語版「真夜中の北京」は翻訳がよくないという評判があるけど(そもそも北京じゃなくて北平だよ)、中国語は綿密に調査されているし、いい文章だと思う。

2冊目にスピンオフとでも言うべきエピソード集がついてるんだけど、こっちは本編ほどおもしろくはなかった。