イマドキの中国語

このあいだの中国語教室で、先生(中国人)が「最近の中国語は中国語らしくない。人民日報を読んでもヘンな文章ばかりになっている」と言っていた。中国に留学していたときも、何人かの先生が同じようなことを言っていた。そういう先生はみんな非常勤で教えている若い大学院生の先生ではなく、専任で長く中国語を教えている、ある程度の年齢に達した先生だった。

その中のかなり年配の男の先生は、「中国に来て実際の中国人が話すことばを学ぶのはいいことだけど、正しくない、よくない中国語は覚えちゃいけない」とよく言っていた。「絶対に“立马”なんていうことばを使うな。“立刻”“马上”というきちんとした中国語があるのに、なんでこんなことばをわざわざ使う必要がある」と怒っていたっけ。私はずっと日本で勉強していて、教科書に固定された「正しい」中国語しか知らず、先生も大学や研究機関で働いているある程度の年齢に達した先生ばかりだったので、はやりことばには無縁で、“立马”は見たことも聞いたこともなかった。そのあと1ヵ月ほどして、テレビドラマの中でこのことばが出てきたときにはほほーと感心したことを覚えている。(ところで、ChineseWriter8では、lìmǎで漢字に変換できた。これってもうある程度認知されている語なのかな)

もう1つ、最近気になるのは「人気」だ。私は「人気がある」は中国語では“受欢迎”といい、“有人気”は間違いだと習った。その後“很红”なんていう表現も知って面白いなあと思ったけど、作文なんかでは一貫して“受欢迎”を使っていた。ところが最近、書いた中国語を中国人に見てもらうと、「“受欢迎”でもいいけど、最近は“有人気”と言う」と直されてしまうことがある。これには納得できない。

日本語だって、友だちとの会話やメールやブログでは「すごく受けてる」を使っても、ちゃんとした場面では「非常に人気がある」というのが社会人というものだと思う。「非常に人気がある」と書いているのを「すごく受けてる」に直されてるような気がしちゃうんだけど、考えすぎなのだろうか。

英語学習では「ネイティブの話すこなれた英語を覚えよう」という立場と「くずれた英語を使うと教養のない人だと思われるから、なるべく正しい英語を覚えよう」という立場がある。

中国語も教材や雑誌がたくさん出てきて、学習環境が整ってきたと思うけど、ここまでの議論にはまだなっていない。私は「まだ中国語はそれほど上手じゃない」と思われるのはしょうがないけど、「上手だけど品のない中国語を話す」と思われたくはない。たぶん、私がもうある程度の年齢だからなんだろう。

問題はどんな表現が正しく、どんな表現がくずれているのか、私には判断できないということだ。人民日報でさえ文章がヘンだと先生は言っているし、まわりにいる留学生たちは私が中国語を習い始めた頃はまだ幼稚園か小学校低学年だったはずで、私のほうが大人な中国語を使っているかもしれない。

中国人と交流したり、ネットを活用したりして生きた中国語を学ぶのは必要なことだと思うし、実際にそうするよう努力もしているんだけど、こういう表現は覚えない方がいいよ、ということをきちんと教えてくれる先生に見てもらうということは、私にとってはとても重要だ。

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コメント

  1. congzi より:

    文全体のニュアンスが語句によってまちまちだと、おかしな言葉を話す人になっちゃいますよね。語句と語句のつながりが統一感あること、は、相手に与える印象を左右するとても重要な要素だと思います。聞いてて聞きやすい言葉であることがコミュニケーションの最低限の礼儀であり。たまに「○○ことば」のような、社会層によって使う語句・使わない語句はありますが、そもそも外国人=その社会のその層に生きている存在とは認識されない、ので、「それっぽい」言葉を話す・話さないことで親密さが増すとか、心的距離感に影響するということはまずないのでは?と思います。はっ、つい卒論の社会言語学を思い出して熱くなってしまった…

  2. sang shan より:

    言葉遣い・・・最終的には自分の「知性」(うう・・・私の場合日本語でさえないですが・・・)を表す言葉でなければ、ただの「おしゃべり」に堕してしまう可能性が高いですよね。もちろん、言語を学んでいる本人が「それでいい」というならそれでもいいのですが・・・(~_~;)。ただし、大人の話す言葉が話せないなら(あるいは能力的には不十分にせよ、それを学ぼとする謙虚な心がないなら)その言葉を使って仕事をしよう!などと大それたことを考えるべきではないと思います。現在中国語検定理事の某先生が「私には『会話くらいできるようになりたい』という人の気持ちが分からないのです(=その『会話くらい』が本当に難しいのです)」というエッセイを書いておられました。当時は「アナタのそういう考え方が中国語検定を無駄に難しくしているんだぁっっ!!」と恨んでいましたが、今ではその言葉にしみじみと頷くことができます。うう。

  3. cowley より:

    congziさん
    そうそう、統一感のある話し方をしたいなあと思うんですよ。外国人だから間違いはしょうがないし、ときにはそんなことばは使わない方がいいよ、ということばを使ってしまうことはあると思うけど、「いったい、どこで誰に中国語を習ったの?」と言われてしまうような中国語を話してて、それに気づいていないというのは怖いです。

  4. cowley より:

    sang shanさん、おひさです。
    以前、短期の通訳講座に行ったときに先生に「お金のとれる日本語をしゃべってください」と言われたのが印象に残ってます。中国語は外国語なんだけど、それでお金をもらうんであれば、いい中国語を話したいです。謙虚に勉強、ですね。

  5. sang shan より:

    実は、ネットで見る今どきの中国人学生の日本語の言葉遣いも気になっています(~_~;)、確かに最新スラングの日本語を使えるほどよく勉強しているとも言えますが、今後仕事などの際大人の言語を求められたとき、同じ言葉遣いになりはしないかと他人事ながら心配してしまいます(訳も分からず使っているケースも多いような…)。中国人学生の知性の高さは疑う余地がないので、それを日本語でも表せるような表現になるとよいと思います。ちなみに、「人気」などに代表される「和風中国語」ですが、日本に滞在経験が長い中国人の中国語って、日本語語彙との混同が知らず知らずのうちに多くなっている気がします。中国現地との感覚の違いもあると思いますし・・・。それが本当に中国語らしい表現なのか、また今後も定着するかどうかも含めて考えると、私も「受歓迎」派ですね(~_~;)。

  6. cowley より:

    「和風中国語」、多くなっている気がします。スポーツ選手は「運動員」と覚えましたが、今は「選手」でOK。
    日本語にも定着した外来語や新しい言い回しはたくさんあるけど、ちょっと緊張する場面で使っても大丈夫なものと、乱れてると感じられてしまうものがありますよね。人によって感じ方はちがうでしょうか、それぞれ、無意識に一定の基準があるんじゃないかと。中国語も同じだと思うんだけど、外国人にはその判断は難しいですね。

  7. ichicre より:

    かの国の国名のうち国産は「中華」だけで「人民」も「共和国」も明治維新で一足先に近代化を始めていた日本から輸入した単語なんです。そう考えると、現在は第二次中国日本語輸入期なのかもしれませんね。
    あと、台湾的な中国語もネット用語を中心に普及してますね。これを聞くとなんか「かゆい」気持ちになります。

  8. cowley より:

    最近、中国でお店に「~屋」とつけてるところをみかけますが、それも日本からだとか。確かに日本語輸入期という気がします。
    ネット語は「人気」どころのさわぎじゃないですね。「東東」とか「粉絲」とか「玉米」とか、もう私には何がなんだか…日本の流行語でさえもうよくわかってないのに(泣)。

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