「の」

今朝の新聞に俵万智さんがエッセイを書いていた。子どもに絵本の字を1文字ずつ指さしながら「の、り、も、の」と読んでやっていたら、子どもがハッと気づいたらしく「の」という字を覚え、外に出かけたときに看板などの「の」を見つけるようになった、そうやって見てみると「の」はよく見かける字だ、というようなことが(エッセイの主題ではないけど)書いてあった。

これを読んで、あることを思い出した。

かつて和文タイプライターというのがあったが、これは鉛の活字でインクリボンを強く打ちつけて字を打っていくので、当然プロのタイピストみたいに1日に何万字も打つ人だと、活字がすり減っていき、定期的に取り替えなければならない。

それで、タイプライターを販売したり、メンテナンスをしたり、交換する活字の供給をしたりする会社があったわけで、その会社の人に昔々聞いた話だ。

日本語の文字の中で一番よく使われるのはひらがなの「の」なんだそうだ。それは、タイプの活字の減り具合でわかる。「の」は他の字に比べると減り方が群を抜いているらしい。

それはきっと、「の」が連体修飾句を作るからなんじゃないかと思う。

英語で一番よく使う字はeである。たしかシャーロック・ホームズだったと思うけど(知ってる人、合ってます?)、暗号の解読の際に一番多く出てくる記号はe、次に「●△e」という組み合わせで何回も出てくるのはthe、だから●がt、△がh、というふうに解読していくという話があった。

日本語は「の」には文法や意味の上で連体修飾句を作るという重要な役割があるけど、英語のeにはない。改めてアルファベットというのは無機的でニュートラルな文字だなあと思う。

漢字はその対極にある。仮名は表音文字だけど、1字で1音素ではなく1字で1音節だから、1字で1つの意味を表すこともあるわけだ。こういう文字で育ってきたということが言語感覚に何か影響を与えるということはないのかなあ。

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コメント

  1. たむたむ より:

    おはようございます。
    へ~、日本語って面白いも の ですね。今まで考えたこともなかったです。って無理やりつけてみたりして。
    ところで、「の」と言えば、前から気になっていたのですが、クリームとかを塗る時に「の」の字を書くように塗りこむ。って言いますよね。中国語ではなんていうのでしょ??  気になります。

     来週から、5年ぶりくらいに上海行きます。悲しいことに出張です。今まで上司と一緒だったんですが、今回は4人も引き連れて初1人です!!あー、今から緊張です。 ラスト②日はフリーになるので、観光してきます。オススメスポット、お店、本屋さんなどなど、ご存知でしたら教えてくださいませませ。

  2. cowley より:

    あららら、上海、うらやましいですね。
    一昨年、上海に行ったときに南京路を歩きましたが、私の覚えていたのとまったく違ってました。前に行ったの、10年以上前ですもんね。去年は西安からの一時帰国のときに乗換えで1泊しましたが、そのときはどこにも行きませんでした。
    私が2日フリーになったら…やっぱり本屋かなあ。東方明珠のまわりはオサレな感じなんですが、ものを売り歩くおじさんおばさんは思いっきり中国で笑えます。

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