小さなぼくとのさよなら

武術学校に行ったら、いつも一緒に練習している馬3先生の班の男の子に会った。班の中で私が見る限りいちばん上手な子だ。色が白くていつも困ったような顔をしている。たぶん10歳前後だと思う。

だぶだぶの上着を着て手を振りながら「練習にきたの」と聞くので「そうだよ」と言い、それから「私、来週日本に帰るんだ」と言ったら「どうして」と聞かれた。どうしてって…「だって、私の家は日本だもん」と言うと「また来る?」と聞く。「うん、きっと来るよ。いつかはまだわからないけど」と言ったら、ちょっと黙り、それから「じゃ、ぼく行くね。授業だから」と行ってしまった。

何を言っても困った顔ではにかんでいた彼が自分から話しかけてくれるようになったのはごく最近のことだ。大きくなってもっと上手になった彼を見たいけど、次来るときにはもう卒業してしまってこの学校にいないかもしれない。

帰りたくないなあと思う。ずっとそう考えないようにしていたのに。

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